自傷行為をする人と出会ったことはありますか?
リストカットといった身体的な自傷行為はもちろん、精神的な自傷行為を繰り返す相手と深く関わったことはありますか?
幸せになってもいいはずなのに、どう見ても不幸になる道しか進んでいない。罪を償うために自分を犠牲にして周りを幸せにしようとしている。
こんな人をどうすれば救えるのでしょうか?
・・・
・・・
救えません。
救おうと思っても救うことはできません。
そういった自傷行為をする人って意味もなくするわけじゃないんです。『自傷行為をするのが大好き!』と悦に入れる人なんかいません。よく誤解されるのですが、したくてしているんじゃありません。
しないとおかしくなってしまうからするんです。
自傷行為をする人は、そうしないと悩みに押しつぶされ、自分を保つことができなくなるからするんです。
やりたくてやっているわけじゃありません。
数十年生きてきた上で、自傷行為をしないといけないほどの環境になっているんです。
そんな人、救えますか?
あなた一人でなにができますか?
愛さえあれば?時間さえかければ?根気さえあれば?
そんな簡単な話ではないですよ。
愛があっても、時間をかけても、根気よく続けても、救えないこともよくあります。
救う=自傷行為をしなくていい状態にする
です。
自傷行為や破滅願望を相手の中から消し去るということです。
簡単なことではありません。
生半可な覚悟で踏み込んではいけません。
生半可な覚悟で踏み込むと、助けるどころか、あなたが引きずられてしまいます。
数カ月もあれば自傷行為をしなくなる?
こちらが誠心誠意をもって接すればわかってくれる?
・・・
甘いです。
その程度の覚悟では踏み込んではいけません。
僕はね、最初はそんな中途半端な覚悟で踏み込んでしまいました。
今までね、ある程度は人の手助けをしてきたし、今回もそれでなんとかなると思ってました。こちらが本当に相手を思って行動できたら、相手を闇の中から救い出せると思っていました。
でも、現実は違いました。女性だったんですけどね、彼女は僕が今までの人生であった人の中で一番暗い闇の中にいました。彼女の不幸なところは人の何倍もの闇の中にいるのに、それを周囲には気取らせないように隠し通せる精神力の強さも持ち合わせていたところでした。
周りから見たら彼女は人生を謳歌している光の中にいる人のように見えるのですが、その人たちが想像もつかないほどの自傷行為を繰り返していました。その自傷行為がリストカットなどの周囲からわかりやすい行為ではないため、誰も彼女が自傷行為をしていると気づかないんですね。
だれにも助けを求めず、リストカットをした方がまだマシだろって感じの自傷行為をし続ける。ひどく歪に見えました。『こんなにいい子なのにどうして?誰も救わないのなら僕が救ってやる!』みたいな感じで踏み込んでしまいました。
そこからはもう、挫折の連続ですね。どれだけ強い言葉を使っても彼女には響かないし、口先だけの奴にならないよう行動しても、全然望んだ成果なんて出ない。
数か月どころか数年たっても、自傷行為を止めることさえできない日々が続きました。
自分がこんなにも無力だったのかと思い知り、今までもっていた自信なんてきれいさっぱり吹き飛んでしまいました。
本当に人を救ったことなんて一度もないんですよ。悩みのある人の話を聞いて、アドバイスもせず傾聴するだけ。それで表情が柔らかくなってくる人を見て、勝手に救った気になっていただけ。その人の闇の外部にさらされている部分だけを取り除くだけで、闇の中心部には決して手を出さなかったんですね。自分にはそこまでその人の人生に介入する資格はないと思っていたし、その人の生き方を変えられるとも思っていなかったので。
今思えば無謀ですよね。今までは闇から漏れでた灰汁だけを取り除いていたのに、同じ要領で闇そのものを取り除けると思っていたんですから。
でも、彼女を救うには闇そのものに手を出すしかなかったんですね。灰汁を出さずに闇を抱え込める人だったので、他に方法がないと思ったんです。
実際にできることって、ほとんどなかったんですよね。関われば関わるほど、彼女の闇や歪さが自分が想定していたものよりはるかに大きいことがわかりました。危うい精神状態を自傷行為をすることによってなんとかバランスをとることができている。綱渡りができている。自傷行為をやめてしまうと綱から落ちてしまうことがわかりました。
僕自身ね、わからなくなってしまったというのもあるんです。理屈では自傷行為をとめないといけないのはわかります。だけど、その自傷行為がもう彼女の人生の一つになっていて、簡単にはとめられない、急にとめてしまうと彼女が壊れる可能性があると感じました。
病院で治療を受けさせるのが一番正しい選択だったのだとは思いますが、彼女がそれをひどく拒否したため、それもできませんでした。(家族でも恋人でもなかったので、そこまで介入したら邪魔者として切り離されると思っていました。)
こうしている間にも彼女は自傷行為を繰り返しています。それで満足感を得られているのなら僕もほっといたと思うんです。でも、彼女は自傷行為のたびに深く傷ついて疲弊して、ギリギリの精神力をさらに削っていました。
だから救うために、自分のできることを全力でやりました。自分の能力以上のものを求め、手にし、それでも結果がでませんでした。
自分のできることは全てやったと言い切れます。それでも彼女は変わりません。
僕の残された選択といえば、ただ彼女の負担を少しでも解消すること、そばにいて「一人じゃないよ。」と伝えることでした。
だけどそのころには、僕の中で彼女の存在が大きくなっているんですね。元々はちょっとした知り合い程度だったんですが、僕の中では大切な人に変わっていたんです。
そこからはさらに自分の無力さとの戦いでした。彼女が苦しんでいる姿を見ると、自分が苦しんでいる以上に苦しいです。ですが、自分には何かを変える力もない。『支えてあげないと。』と誓いながら、何度も心が折れそうになりました。
誰かに相談したら「それはやりすぎている!」とか「お前のその行為が自傷行為だろ!」と言われるのはわかっていたので、誰にも相談しませんでした。あきらかにやりすぎでしたし、依存もしてました。『どうしてできないんだ!!』と意地にもなっていましたし、『ここで僕が見捨ててしまったら彼女は・・・』という思いもありました。
当時を振り返っても『あの頃以上のことは絶対できない。むしろあそこまでよくできたな。』と自分でも思うくらいなので、たぶん過去に戻れたとしてもあれ以上の結果はでなかったのでしょう。だけど後悔はしています。
結局、当時生きてきた人生の4分の1を費やしてわかったことは、『僕には彼女は救えない。』ということでした。僕の彼女との物語はハッピーエンドを迎えることがないということだけでした。
・・・
なんか、めちゃくちゃ長くなってすみません。書いていたら止まらなくなっちゃって。もう少し軽くふれるつもりだったのですが、完全に僕の話になっちゃいました。こういったことを文章で書くことも彼女を裏切るようで当時はできなかったので、ちょっとは気持ちの整理ができたということにしときましょうか。
・・・話しを戻しますね。
とにかく僕が言いたいのは、自傷行為を続ける人をあなた一人で救うことは難しいということです。『自分には幸せになる資格はない。』、『自分は幸せになってはいけないんだ。』と思っている人を、変わろうとする意志のない人を変えるのは難しいんです。
あなた一人の力では救えません。
本当にその人を救いたいのなら、協力を求めてください。
結果を求めるのなら、一人でも多くの人と一緒にやってください。
あなた一人で使命感をもってやってしまうと、それは破滅に向かいます。一緒に闇に吸収されてしまいます。
今まで生きてきた過程で自傷行為をするようになってしまったんです。
急に意味もなく、興味本位でしているわけではありません。
あなた一人で抱え込んでしまうと、相手を救うことができないことがあなたの自傷行為になってしまいます。
本当に救いたい相手がいるのなら、自分の無力さを受け入れてください。意地にならないでください。そこからです。
本当に相手のことを思うなら、使命感、責任感、プライド、捨ててください。もう少し気軽に。もっと気長に。
相手の自傷行為をとめることができないからといって、あなたは相手になにも残せていないわけではありません。
そこまで相手のことを思っているあなたは、絶対に相手の力になれているはずです。
心優しいあなたの人生が幸せに包まれますように。
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