大切な人がつらい思いをしている、苦しんでいる場面に遭遇したことがありますか?
身体的なものだけではなく精神的なものが原因で、大切な人が見ていられないほど苦しそうにしているところを目撃してしまったことはありますか?
これね、すごく大変なことなんですよね。
あなたの大切な人が苦しんでいるわけです。沸騰した鍋の中に入れられてグツグツと煮られているわけです。
最初は悲鳴を出していましたが、今では悲鳴を出す元気さえありません。沸騰した鍋の中で「熱い!」と声を発することもなくグッタリとしています。
まるで『半分死んでいるんじゃないか?』と錯覚してしまうほど生気がありません。
この場合あなたはどうしますか?
鍋の火を止められるのなら、もちろんすぐに止めますよね。
でも、火を止めることができない状況なら?
あなたは沸騰した鍋に飛び込むんじゃないですか?
あなたはあなたの大切な人を助けるために覚悟を決めて鍋に飛び込むます。
飛び込んだ直後はあまりの熱さに声が出ません。感覚も麻痺します。
そして数瞬後、ものすごい熱さが身体を襲います。熱さというより、もう痛さですね。全身を針で刺されまくったかのような激痛が身体を走ります。そこで初めて声が出ます。「ぎぃやゃゃゃぁああぁぁ!!!」と叫び声が。あなたも大切な人と同じ環境に身を置くことになります。
大切な人は自力では脱出できないほど弱っています。
「こっちへ!」と手を差しのべても反応すらしません。相手の耳には入っていますが、自分の声が相手の心にはまったく響かないんです。
相手からの反応がないなら自分から近づくしかありません。グツグツと沸騰した鍋の中を障害物を掻き分けながらゆっくりと進みます。
その度に激しい痛さを感じ、身体と心が悲鳴をあげますが、それを『絶対に助けるんだ!!』、『絶対に救ってみせる!!』と、意志の力で押さえつけます。
やっとのことで相手のところまでたどり着くんですが、そこで問題が発生するんですよね。
何もできないんです。
相手がグッタリしていて引っ張っても動かないし、持ち上げようとしても力がないんです。
相手の場所まで行ったのはいいのですが、そこからは何もできません。グツグツと沸騰した鍋に一緒に煮られるだけです。
そこであなたは絶望をします。
助けてあげたいのに、自分には力がないことに気付きます。
相手を助けようと言葉にしても、相手には届きません。
相手を助けようと行動しても、一向に思う結果までたどり着けません。
相手が以前のように笑って暮らせる場所を用意したいだけなのに、自分にはその場所を用意する力すらないんだということを実感します。
無力な自分に絶望します。
何もできない自分に怒りと悔しさが襲ってきます。
助けたいと思っているのに、助けることができません。
相手への罪悪感でいっぱいになってしまいます。
これね、
助けなくていいんですよ?
薄情に聞こえるかもしれませんが、あなたの問題ではなく相手の問題なんです。
相手が対処しないといけない問題なんです。
あなたは自分の時間をかなり削ってまで助けようとしていませんか?
あなたは自分の生活を壊してまで助けようとしていませんか?
あなたは相手を助けるために色んなものを犠牲にしてきたのではないですか?
あなたは相手を救うために自分の人生を壊していませんか?
相手の人生を救うことがあなたの生きる意味ですか?
相手の人生を救うことがあなたの存在理由ですか?
本当に??
救えていませんよ、大切な人。
助けられていませんよ、大切な人。
あなたはただ、意地になってるだけじゃないですか?
『俺しか相手を助けられる人間はいないんだ!』
『わたしがあの人を救わないといけないのに!』
でも、助けられないんですよね?
その人はあなたが救えるような人じゃないのではないですか?
たしかにあなたに力があったら助けられたかもしれません。
でも残念ながらあなたにはその人を助ける力がないんです。
このままではあなたの方が引きずられてしまいます。
脱出できなくなってしまいます。
というか、もう、その状態ではないですか?
救えない自分のあまりの無力さに、精神が不安定になっていませんか?
助けられない自分のあまりの無能さに、自分を殺したいほどの怒りがこみ上げていませんか?
大切な人が苦しんでいるのに、自分にできることはもう何もないんですよね。
ただ近くにいて相手が回復してくれるのを待つことだけなんです。
でもね、その間ははっきり言って地獄です。
『わたしは大切な人一人助ける力もないんだ。』、『僕がもっとこういう人間だったらあの人を救えたかもしれないのに!』という思いを延々と抱え込みます。
相手がいるときは「大丈夫だよ。俺のことは気にしないで、自分のことだけ考えて。」と演技ができるのに、相手がいないときは怒りと悲しみと苦しさで壊れそうになってしまいます。
あなたにはその相手を助ける使命も責任もありません。
あなたは一人で逃げ出してもいいんです。
それは卑怯でも臆病でもなく当たり前のことです。
人間は自分を一番大切にしないといけません。
他人を一番にしてはいけないんです。
それにね、あなたは自分の無力さを呪っているのかもしれませんが、あなたがいることで相手が助かっていることは多いはずです。
あなたが思っている以上に相手の力になっていると思います。
それでも、自分ではどうにもならない状態になってしまったときは、自分を一番大切にする選択をしてください。
心優しいあなたの人生が幸せに包まれますように。
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